次世代のコピー機!

通信技術の分野では一般的に、このような、ある程度の統計的な予想に基づいてつくられる技術がたいへん多いのですが、それは、テクノロジーがコミュニケーションをつくりあげていくためには、実際の人間がコミュニケーションを使って、かなり不確定な要素をもとに実績をあげていくという戦法だと言えます。
純粋に理論的に考えられる可能性を全部数え上げてチェックしていくというのとは、違うわけです。
「中間」は、インターネットの―部分さて、ここまでの話は、空気に相当するところをテクノロジーによってつくっていくという話でした。
拡声器や電話というのは、両端の役割は人間がやっていて、「中間」だけをテクノロジーの力を借りて拡張したものです。
テレビなどは、カメラが目の役割をしているぶん、人間の役割を少しは代行しているといえますが、やはり映像を遠くまで伝達するようなテクノロジーが重要な位置を占めています。
これが従来のメディアだったのですが、コンピュータ‥ネットワークのテクノロジーは、これまで両側で人間がやっていたいくつかの役割も、コンピュータなどのテクノロジーかやっていくという面があります。
そう考えると、いまインターネットは、コミュニケーションのうちの二種類の違った役割を、両方含んでいると言ってよいことがわかります。
繰り返しになるようですが、「中間」メディアとしての可能性の役割と、「両端の人間」の役割です。
デジタル・データを世界中にある程度確率的な不確定さで伝えていくような仕組みと、デジタル・データを利用していくための両端の構造と、この二つの課題、あるいは使命をインターネットはもっていると言えるわけです。
「中間」の部分がコミュニケーション・テクノロジーだという考え方の枠には、インターネットは収まりません。
インターネット全体の役割のうちの―部分が、通信のインフラストラクチャーであるという考え方をもつべきです。
この違いは、よく考え直さなければいけないと思います。
ユニキャストとマルチキャストいままでの通信技術では、情報の伝達の仕方に大きく分けて二つの考え方がありました。
それは「ユニキャスト」と「マルチキャスト」です。
つまり、―対一なのか、―対多、あるいは多対多なのかということです。
これからのデジタル・コミュニケーションを考えるうえでたいへん重要な二つの考え方です。
人間のコミュニケーションたとえば部屋のなかでしゃべるとかは、―対多、または多対多が基本です。
むしろ―対一は特別なのですが、これまでの通信技術は、多くの場合、―対一のコミュニケーションモデルを基本にしてつくられていて、ここにはそもそも大きなひずみがあるといえます。
インターネットの世界でも―対一モデルを前提した技術が基盤になっていますが、たとえば、どこかひとつのコンピュータに蓄えられている、あるひとつの情報をみんなが取っていくというようなことは、事実上一対多のコミュニケーションです。
この方向をどういうふうに発展させていくか、大切な課題だと私は思います。
また、同じように見えるものでも、違っているということがあります。
たとえば、たくさんの人に一人が話をする―対多―というとき、生身の人間なら、コミュニケーションは双方向です。
何か言えば、誰かから反応が返ってくる。
一対一であれ一対多であれ、それが自然です。
しかしテレビ、出版、新聞などいわゆるマスメディアは一対多であっても一方向性という制約のもとにあります。
つまり、コミュニケーションのモデルが少し変形しているのです。
実際には、生放送中に電話やファクシミリを受けつけるとか、出版物に対して読者カードが送られてくるなど、完メディアとしての可能性全に一方向性だとはいえませんが、厳密に見れば、テレビや出版など、そのメディア自体では双方向性は実現できていません。
同期型コミュニケーションと非同期型コミュニケーションコンピュータの分散システムのコミュニケーションについて、もうひとつ重要なテーマがあります。
「同期」と「非同期」という問題です。
すなわちコミュニケーションの主体、人間なら人間が、コミュニケーションをめぐってどういう振舞いをするかということにかかわる問題です。
同期型のコミュニケーションというのは、それぞれの主体の動きか、そのあいだのコミュニケーションを利用して動いているようなときのコミュニケーションです。
別の言い方をすれば、何か指示を待ってから動くなど、コミュニケーションに基づいたほかの人の動きに依存して活動が起こされる、そのようなコミュニケーションです。
はじまりと終わりを明確に定義して、コミュニケーションする主体がタイミングを合わせて実現するコミュニケーションといってもよい。
たとえば電話がそうです(片方がかけても相手が出なければ成立しません。
こちらがかけて、その時に相手が出ることでコミュニケーションが成立するわけです)。
また、授業とか、ミーティング、放映時間があらかじめ知らされているテレビの番組なども同期型のコミュニケーションです。
一方、非同期型のコミュニケーションというのは、主体の活動にかかわらず発生するコミュニケーションです。
突然雨が降ってくる、そのような感じのもので、手紙など、相手との調整なしに始まるコミュニケーションです。
人間のコミュニケーションにはこの両方が混ざっていて、いずれをもテクノロジーで支援すべきなのですが、実際に存在しているコミュニケーションのテクノロジー、あるいはデータ通信の技術は、どうしても同期型コミュニケーションに偏っています。
非同期型コミュニケーションは、きちんとした定義ができないので、これまでの技術ではむずかしかったのです。
人間は眠っているとき以外はいつも活性化されていますから、予期しないものを受け入れる能力がかなり高いのですが、コミュニケーション・テクノロジーはなかなかそうはいきません。
非同期のコミュニケーションを始めるとき、相手側は瞬時になにしろ事前の打ちメディアとしての可能性合わせはないのですからllL-1準備をしなければいけないわけですが、これがむずかしいのです。
インターネットはコンピュータ間では、「いつも」つながっているので、かなり非同期のコミュニケーションに対応できていますが、まだ十分ではありません。
この同期と非同期の問題も、テクノロジーと実際の人間のコミュニケーションとがずれているポイントで、今後の大きな課題になるのではないかと思います。
人間を支えるいろいろな例を挙げてきましたが、つまるところ、人間のコミュニケーションの支援から出発した、いまのコミュニケーションのテクノロジーは、技術の仕組みの限界から、人間の本来のコミュニケーションの仕組みから外れてきたような経緯があるのです。
しかし、デジタル二丁クノロジーとコンピュータの組み合わせからできてくる、コンピュータ・ネットワークの世界では、これらの多くの制約を取り除くことができる部分がたくさんあります。
人間の本来のコミュニケーションのあり方に立ち戻って、さまざまなことを進めていくことができる。
この点で、インターネットは、人間を支えるコミュニケーション・テクノロジーとして、つまり情報や知識を伝達したり共有したりするメディアとして、これまでのメディアにはなかった可能性を示しはじめているということかいえると思います。

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